1時間余の歓談

 

 心して語ることは、いわば老人の繰り言。消費者済ませようと思えば、済ませられるが、済ませたくない人をめざしてほしい。

 私が今あるのは幾人もの恩人のオカゲだ。「ストックの生き方」を諭す人を私は恩人と見て来たことを伝えたかった。その極めつけは、ダライラマが来日時に知人が直に教わったという「今はないのだよ」の話。このヒントを得た時も、私はココロの中で化学反応が始まったことに気づいた。学生にもココロの中で化学反応を始めてほしい。

 「文明」と「文化」、「つぶす喜び」と「創る喜び」、「虚」と「実」、「都」と「鄙(ひな)」、「無」と「無限大」、あるいは「拡散」と「収斂」など。若者にはブレずに生き、しかも豊かにになってほしい。

 だから、この日もらった暑中伺いのメールに対して次のような返信をしたことを思い出し、コップ一パイの冷たい水だけで半時間近くも語ってしまった。


厳しい暑さが続きますが、お元気のご様子なによりとぞんじます。
私たち二人も、暑さに閉口しながら、元気にしております。

日本は、いよいよ怪しげな国に向かっています。
法的安泰性まで無視し、主体性を欠き、おびえたような国になりつつあります。
逆に、永世中立を誓い、不戦の国となり、人類の進むべき方向を指し示す国になればよいのに、と願います。

産業革命を起こし、今日の工業社会を生み出したイギリスが、EUから脱退しました。
再加盟を目指すがごとき(工業社会に留まるがごとき)動きをするのか、
次の社会を創出する国を目指すのか、見ものです。

私がご子息の年頃の時は、誰しもが希望に燃えていました。
工業社会へ移行する希望です。しかしそれは悪しき希望でした。欲望の解放に過ぎませんでした。
だから、地球環境まで破壊し、生きとし生けるものを皆殺しにする緩慢な自殺行為でした。
今は、若者すら希望を抱く人が少ない、と言われますが、それはおかしいし、寂しい。
むしろ、人間の解放という、望ましき希望を抱くべき時だと思っています。

中国も、このままでは危ない。次代に目を向けてほしい。さもないと自壊しかねない。
ここで日本が進むべき方向を示し、アジア連合を構想し、呼びかけたいものです。
日本は、先の戦争でアジアの国々にさんざん被害を与えましたが、
次代の模範を示し、先導しそれをもって償いにしたいものです、

まだ暑さは続きそうですが、皆さまお体ご自愛ください。



 このような気分で学生と歓談しながら、イギリスがトランプ現象化のごとき国になる可能性もなきにしも非ずだ、とフト思った。

 


「今はないのだよ」