レイさんの手紙は「私も元気だ」との気迫に満ちており、嬉しかったし、ありがたかった。NZでは既に初夏の兆しが始まっているはずだが、冷暖房効果を高める工事の紹介だった。NZは、少なくともレイさんが住まうワンガレイは、夏はとても快適だ。だから冬への備え久慈に違いない。きっとレイさんは「私になら暖房効率を高められる」と考えたようで、引き受け、取り組んだのだろう。
外壁に穴をあけたところから完成まで、解説付きで、写真が添えられていた。
少し閉所恐怖症の私には到底取り組めない仕事だが、所期の目的を果たしたという。負けちゃおれない、と元気をもらえた。この工事は、一旦もぐり込めば「ペンチを忘れた」だけでも大変なことになる。それだけに、途中で投げ出しにくいはずだ。15枚の写真は。私に見せてよろうと考えたいわゆる自撮りに違いない。
潜り込む穴をあけた現場の紹介、潜り込む前の姿、現場、基礎の改造、断熱材の充てん、そして仕上げと、作業工程が綴られていた。私は、その行間に、レイさんの心境を読み取ろうとした。おかげで、良いことがあった。
晩夏の草刈りに取り組み、その2か所目の裏庭、コゴミ畑で、私なりにギリギリの判断を迫られた。この日は、カンカン照りではなかったが、高温だけでなく、ものすごく湿度が高い作業場だった。途中で投げ出したくなったが、狭い床下に潜ったレイさんを思い出し、「ここっ」というところまで刈り取り、何とか所期の目的を達成させられた。
次は、アリエさんのオカゲだ。なぜかアリエさんを思い出した。ここが潮時と判断できた。アリエさんはきっと未体験になったのだろうが、私にはアリエさんという体験がある、と思った。あと片付けは後回しにして、行水に走った。
まず頭にゆるやかに冷水をかぶった。ヌルヌルッと生暖かい水がほほに伝わって流れ落ちる。3杯目あたりから気分が爽快に向かった。よき1日の締めくくりだ、と思った。
レイさんとアリエさんから、根気とその潮時を自習させてもらったわけだが、こうした人たちに触れたり勇気をもらえたりしたことが、何故か嬉しかった。こうした人たちこそ、真の自尊心(セルフエスティーム)に満ち溢れた人であろうと考え、ちょっと卑下させられたが、勇気も授けられた。
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