気分転換

 

 豊洲問題で「何たるブザマ」と、仰天。「いかなる金が、いかに動いたのか」「誰の口が重くなったのか」と疑問が膨らんだ。だが、それは序の口。国ベースでは、もっと大きくてお粗末な話が、顔が分かりにくいままに広がっていた。

 東京オリンピック。7000億円が、3兆円に、と国税が垂れ流されそうになっている。要はそのキッカケ作りのために「ウソの啖呵(放射能をコントロールとかブロックしている)」が切られたのだろう。それにことよせ、群がる人がわんさと現れたわけだ。

 これは福島原発事故の救済復興事業を窮地に立たせているに違いない。拉致問題もどうようだ。この解決が「政権の使命」と啖呵を切っていたが、影が薄くなった。こうい った先の啖呵をごまかすために、国民の目線をそらせるために、オリンピックだろう。

 美浜原発3号機の20年延長稼働は、もっと質が悪い。先に延長された事例は例外、と思っていた。だがこれで、多数の(40年で廃棄されるべき)原発を20年の延長稼働を常態化させる手が打てた、ということになるだろう。つまり国民は、圧倒的に高くて危険なエネルギーを使わされ続けることが常態化したわけだ。オリンピックと違い、こちらは命と人生がかかった話だ けに深刻だ。福島原発事故では、多くの人が人生を狂わされたままになっている。この事故に伴う様々な損害をおぎなう経費は、国税とすべての電源の電気代で、つまり国民の負担で多くが賄われることになる。本来なら、原発に伴う経費として原発の電気代に乗せておくべきだ。その圧倒的に高く着く分を、別途国民に負担させ、原発による電気代は安い、と言い続け、ここまで引きずり込んでしまったわけだ。

 ここに至って、太平洋戦争とよく似ていることに気付かされた。そこで、このたびは、一書を読み、2本のTV録画を見た。それだで、「ハハーん」と分かった気分にされた。

 一書は『大本営発表 改竄・隠蔽・夏象の太平洋戦争』辻田真佐憲(まさのり)であり、2本のTV録画は、『ヒロシマ 世界を変えたあの日』(イギリスの近現代史で定評があるブルック・ラッピング社が、米日(NHK)と共同製作)上下だ。

 この番組では、「敵はアメリカだけではなかった」と、日本の被爆者に語らせている。被爆後の惨憺たる市街地に日本軍のトラックが駆け付けたが、トラックに救い上げて乗せたのは兵士として使えそうな若い男に限った、という。

 また、長崎の投下は、防げていたに違いない、との証言があり、それは「防げていた」と断言したい人の証言、と見て取れた。

 元陸軍特殊情報部員の長谷川良治さんは、5時間も(投下)前にヒロシマと似た動きを示すB-29を補足しており、夜も寝ないで追跡し、その情報を逐一上層部に届けた。だが上層部は動かず、なぜか何らの命令も下さなかったのか、と憤慨する。

 かたや長崎では、近郊の空港では満を持して命令を待っていた航空部隊があった。そのパイロットの1人、本田実さんは、広島上空で原爆投下を目撃していた。迫りくる危険を察知しながら、参謀本部は動かなかったわけだ。その確かな証拠であるメモ書きをこのたび見て、本田実さんは「なんで命令を出さなかったですか」と不思議がった。

 その時、大本営では会議中で、第2の原爆投下についても言及していた。そこで当時陸軍参謀総長の梅津美次郎は「はたして米国がどんどん原爆を用いるかは疑問である」と発言している。その会議中に長崎に投下された。

 本田実さんは語る。「5時間もあったら十分に待機できたはず」「B-29は、落とせない飛行機ではなかった」と悔しがり、「それが日本の姿ですね」とあきれ顔。

 ここで、「ハハーん」と分かったことがある。『大本営発表 改竄・隠蔽・夏象の太平洋戦争』を読んでいたからだ。「日本兵の証言集」も紐解いた。

 そこで分かりかけたことは、国民は「ウソをつかれることを好んでいた」という事実だ。負け戦であれ、「勝った勝った」と報道した方が、新聞の発行部数は伸びた。まるで結婚詐欺師のごとく、耳障りがよい言葉をはけば喜ばれた。

 日本という国は、戦前も戦後も変っていない。戦中はなにせ武力戦争をしていたから国民の「命」を粗末にした。上層部は、戦争を口実に、食料を始めあらゆる物資を国民から吸い上げ、上層部が思うがままに分配した。

 今は違う、経済戦争時代だ。だから、命の次に大事と言われる「金」に目を付けている。いったん国税という形で吸い上げてしまえばよい。あとは、それを欲しいままにする戦法を工夫すればよい。

 「命」を投げ出させた戦争であれ、国民があってほしくないと願うことは「なかった」と国がうそぶけば、信じてしまいたい風土だ。わけはない、とカラダで心得た人が操ろうとする国だろう。こう思うことで、気分を転換し、トウガラシやモロヘイヤの葉っぱ摘みに専心した。