プライバシーの概念 |
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これで「解った」と思うところがあった。アイトワに見える東洋人と西洋人との間で生じていた顕著な差異、その差異を生じさせていた要因に気付かされた。それだけに、充分心得ておくべきことだと反省した。 これまでの道標には、「プライバシー」とのサインも含めていたが、この「プライバシー」の表示に対する受け止め方に「彼我の差異」が見られわけだ。 「庭を開放しました。しかし『プライバシー部分』があります、との軽い気持ちで取り付け加えた1枚だったが、その1枚が与える印象が彼我に大きな差異を生じさせていたようだ。東洋人、とりわけ中国人は、この表示があるにもかかわらず、かなり内部にまで入り込み、記念撮影などをする人が多い。だが、西洋人がそのようなふるまいをした事例がこれまでにない。この1年ほどは、西欧人の来店客が増えており、この1週間は7割ほどが西洋人だったが、誰一人として庭の方向に踏み込んだ人はいない。 私は「こちらの方向はプライバシーです」との意味を示したつもりの1枚だったが、西洋人はその「方向を示す矢印」を認識する以前に、まず「プライバシーという文字」自体が与える印象に強く反応し、行動に反映させかねないことを知りえた。 この一帯はそれでなくとも閑静であり、「プライバシー」を尊重してくださいとの雰囲気が漂っている。そうした小路にアイトワは門扉を開いていながら、「プライバシーを尊重ください」と云わんばかりの表示を、「どうぞお入りください」との表示と同じ支柱に取り付けていたわけだ。無神経であった、と言わざるを得ない ドンさんの助言に従い、即刻「プライバシー」の表示を取り除いたが、何か物足りない気分にされた。その物足りなさに気づいたのは夜分だった。そこで翌早朝を待ち、取り除いたプレートを活かし、「ドールギャラリー」の表示に替え、取りつけた。 ドンさんには、もう1つ助言を得ている。「プライバシー」の表示は、別のポールなどに取り付け、少し踏み込んだ位置に立てるように、との助言だ。これには次週以降にでも取り組みたい。 ちなみに、西洋人の来店客が増えたと言ったが、その比率が急増した要因には別の意味がある。日本人の「一元来店客」の急減である。そのわけは庭仕事をしたり、佛教大生と昼食を取ったりしている時に観察して分かった。 アイトワの入り口の向かい側両サイドで繰り広げられる「客待ち」「呼び込み」行為の影響だ。日本人客は、多くが「呼び込み」行為に反応し、引き込まれる人もいる。引き込みから逃れた人の多くや、「呼び込み」に応じない人は、この場所からともかく足早に立ち去りたいのか、「駆け抜ける人」になっている。 西洋人は、それはそれ、これはこれ、で峻別できるようだ。 もう1つの理由は憶測だ。東洋人と西洋人との間で生じていた顕著な差異は、いわゆる狩猟民族と農耕民族の差異かもしれない、と見始めている。その文化の差異が、個人の言動の差異も尊重させ合うようになり、プライバシーの尊重意識まで育んだように思えて来た。 |
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「プライバシー」とのサインも含めていた |
「ドールギャラリー」の表示に替え、取りつけた |