悪しき刷り込み
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かつて韓国は日本に「共通の歴史教科書」を造ろう、と提案したことがある。日本はそれに応じられなかった。「なぜか」。それは、国際的に通用する歴史教育ではなく、日本独自の教育をしたいとの思惑にちがいない、と世界から見られてもしかたがないだろう。 欧州では宿敵関係にあった独仏が、今や盟友となり、EUの主軸になっている。その決め手の1つは、ドイツが第2次大戦で自国が蒙った被害ではなく、戦争を仕掛けて国と自覚し、他国への加害こそが問題だとして取り上げ、被害を与えた国家への補償よりも個人への補償を主に解決を図って来たことだ。加えて、被害を与えた国々と「共通の歴史教科書」での教育を始めたことだろう。 その成果に学んだようで、韓国は日本に歩み寄り、両者の子弟に公正な歴史を学ばせ、明るい未来を切り願ったのだろう。「共通の歴史教科書を造ろう」と日本に提案した。 こうした提案を受け入れられずに、相手の歴史教育を非難する資格はないはずだ。さらに、日本は身勝手な歴史教育を、つまり、悪しき刷り込みをしている、と疑われてもヤムナシだろう。 韓国の提案を受け入れ、現実化させておれば、これが糸口となって、中国を始めとする多くの近隣諸国とも共通の歴史教科書を用いる運びとなり、EUのごとく仲の良い関係になっていた可能性が十分ある。ならば日本は、憲法9条を有する国であるだけに、胸を張って、主導的な立場をえていたのではないか。 日本はアジアで最初に工業化に成功した国であり、優秀な国民を1億以上も有している。この韓国から提案された頃は、経済的なゆとりもあった。こうした切り札を活かせば、アジアで主導的な立場を占め得ていたに違いない。しかも、世界で唯一の原爆被災国であり、憲法9条を有しているわけだから、原水爆廃絶はもとより、戦争を起こすこと自体を犯罪とする国際法の制定を日本が進んで提案するなどして世界を引っ張り、少なくとも世界のココロの灯台となっていたに違いない。 今はそのまったく逆の方向へ、つまりババつかみの方向へ、マッシグラに見える。 |