茶の助

 

 私は2度にわたってにわとりを飼っている。その最初は小学生の時の20羽だの飼育だ。2羽の雄と18羽の雌から始まった。やがて、オスの1羽がもう1羽の雄をつつくようになり、すべての雌を独占し、もう1匹の雄をのけ者にした。傷めつけられる雄だけが茶色で、他の19羽は真っ白だった。だから私は、それが孤独にさせられる理由だろうと思っていた。この雄に、私は「茶の助」と名を付けた。

 「白」と呼んでいたボスはある時、もがき死んだ。母が埋めた「猫いらず」という殺鼠剤を食べたせいだ。当時はネズミに悩まされていたから、殺鼠剤を入れた団子を作り、天井裏などに置いて、退治をしていた。その折に、ネズミが食べ残した分を、母は野に埋めて捨てていた。

 当時、日に一度鶏を小屋から出し、20羽を野に放し、バッタやミミズを探して食べさせていた。そのときに、白が掘り返して、その1つを食べてしまった。それがお毒見のようなことになって、他の19羽は無事で、健在だった。

 白が死んだその時から、18羽の雌は自動的に、茶の助に従って行動するようになった。そして、あれほど白に痛めつけられるままになっていた茶の助が、なぜか稀代の銘リーダーになった。

 茶の助がリーダーの時代が数年続いたように記憶するが、その間にただの一度も、一羽のヒヨコもトンビにさらわれたことがない。白の時代は1年余にすぎなかったと思うが、トンビにヒヨコをさらわれている。一瞬の出来事で、私にはなにが起こったのか私には分からなかった。

 ある日、大騒ぎする雌の鳴き声で私が飛び出してみると、キツネが現れて茶の助と対峙していた。茶の助は背を高く伸ばし、毛を逆立て、対峙して一歩も引かなかった。
 

私は2度にわたってにわとりを飼っている