私の存在価値

 

 妻は、畑仕事をいとわず、むしろ進んで取り組んでいる。だが、見通しが立ちにくくて踏み込みにくいところには踏み込みたがらない、傾向がある。だから除草も、手前からコツコツと抜き始める。その方式は妻にまかせて、私は私の流儀を採用するようにしている。それは、一番困難に思われる部分や、一番遠方に当たる部分から手を付ける、いわば戦法だ。そこさえ攻略すれば、後は時間の問題として見通しが立てやすくなるやり方で、私の流儀だ。

 今年はその部分が重なった。つまり、一番奥の畝が、一番厄介な畝になっていた。小鳥の取り分にした人の背丈を超えるアイトワ菜が長けて枯れていたし、その手前にはトウモロコシが枯れ始めていた。それらの下部では野草が好きなように育っていた。今年はこの攻略から手をつけることにした。

 まず鋸を持ち出し、トウモロコシの硬い軸を切って、取り去ることにした。これをいちいち抜いていたら、それだけで体力を消耗してしまい、くたびれてしまう。

 この戦術は功を奏した。瞬く間に背の高い作物の残滓や野草は片づいた。もちろんその間に、オオタデカヤツリグサ、そしてジュズダマソウが花をつけていたので撮影したし、ネコジャラシが長け、種を落し始めていたから、丁寧に抜き去って処分もした。

 かくして、畑の一角を明るくしたが、おかげでこの畝の隣のトマトの畝があらわになった。妻は踏み込んでいなかった。だから、妻は水曜日に、これが最後のトマトです、と話していたが、この語り口は、まるで総理か総理に媚びる日本の官僚のように私には聴こえた。

 そこで妻に、「ハナオクラがたくさん咲いている。今夜はハナオクラづくしの夕餉にしてはどうだろうか」と問いかけた。畑おあちこちで芽生え、花を咲かせたハナオクラは25も収穫できたようだ。そのおりに、「まだトマトも採れそうです」と話しかけてきた。そして「あと5日は、トマトの畝を始末するのはお待ちください」と言葉をつないだ。「あれで最後ではなかった」との発言はなく、まだおいしいトマトを1週間ほど楽しめることを悦んでいる。

 そして夜は、ハナオクラづくしになった

 そ食事中に、トッテンさんから電話があった。「モリさん、今年はハナオクラの花に、アリが沢山集まってこない」との質問だった。「別段!」と応えようとすると、妻が「電話を替わってください」という。結局、トッテンさんも里美さんに替わってもらったようだ。かくして、アリの洗い落し方や、アリが少ない間の収穫の仕方などが話しあわれていた。

 

オオタデ

カヤツリグサ

ハナオクラづくしになった