一国民として哀れに

 

  ここまでシャアシャアとヒトは卑劣になれるものか。横田めぐみさんのことにしても、トランプと、演説で取り上げることにしていたのだろう。

 この2人は、盛んに北朝鮮を悪者にして、肝心のことから国民の目を逸らせようとしている。それはまるで、愛想を付かされかけている夫が、押し込み強盗を騒ぎ立て、女房子供を震え上がらせ、気を引こうとしているかのような姿に見える。

 そもそも、クリントンが大統領の時に、北朝鮮とどのような話し合いをしたのか。それが守られていたら、今のような北朝鮮はなかった。ブッシュが大統領になって、なぜクリントンの約束をホゴにしたのか。それが北朝鮮をアメリカ不信に陥れた。だから今も、盛んにアメリカとの再交渉を叫んでいる。本来ならば、世界の平和を願うならば、この北朝鮮の呼びかけを、ラブレタ-のように受け止め、デートに応じるべき話だ。

 なぜオバマは、再交渉に応じられなかったのか。なぜトランプは、この再交渉をかたくなに避けるだけでなく、逆に北朝鮮が恐れおののくような返信をするのか。なぜ、わが首相はそれ以上に、世界の先頭を切って北朝鮮に悪態をつくのか。本来は、わが国は平和な関係を樹立するために、仲を取り持つべき立場ではないか。

 アイトワ塾では、元は植民地であったフィリピンのあり様が話題になった。同様に、朝鮮をわが国は植民地にしていた。その仲を無理やりに武力によって割かれたわけだ、本来なら、昔を偲びあい、焼け棒っ杭に火がついてもよいのではないか。なぜそうならないのか、多くの植民地が独立したイギリスの例などの例にもならい、考える必要がある。

 ひとまずそれは横におくとして、現政権がアメリカと一緒になって、北朝鮮を戦前の日本にも似た立場に追い込んでいるのは好ましくない。北朝鮮の先制攻撃は絶対にないと見込んでのことだろうが、度が過ぎている。2人の願いが見え透いているだけに好ましくない。

 日本は海岸線に稼働中の原発がある。そこに、迫撃砲を打ち込まれるだけで大変なことになる。これは先週触れた。おの危険性をひたすら高めようとしているかのようにさえ見える。

 かつて私は、30歳ごろまでは、今の私ではなかった。庭に大きな日の丸をヘンポンと翻し、通勤していた。そして特攻隊員に共感していた。仮に私が戦前に生まれていたら、幼ければ予科練を、それ相当の年なら特攻隊員を志願していただろう。もしそれがかなわなければ、何をしでかしていたか。

 今の北朝鮮のリーダーを愚弄するがごとき言動を、時の天皇陛下になす国があったとしたら、何をしだかしでかしていたことか。考えるのもおぞましい。

 こうした人を招きかねない恐れさえ顧みずに、保身に躍起になる首相の姿に、惨めさを通り越して、一国民として哀れにさえ思う。戦後レジームからの脱却を叫ぶ首相は、第2次世界大戦後の日本に誕生した政治の刷新を願っているのだろう。どうしてそこまで過去の亡霊にこだわり、こだわる己の保身に汲々とするのか、と不思議にさえ思っていた。

 そこに、唐突なる国会の冒頭解散案が沸き起こった。これが現実化すれば、日本国民が試されることになる。世界の目はこの一点に、民度の程に、集まるに違いない。

 野党が憲法53条に基づき、臨時国会開会を求めてきたが、3か月にわたって応じておらず、憲法無視してきた。この間に、森友学園問題では新たな事実が発覚している。「タダにしてくれ」と頼まれ、10億円近い土地を、実質上400万円で売り払っていた。15年に汚染土や埋没物を撤去した際の費用1億3千万円は国が払っているので、その分の金額、有益費ぐらい少なくとも売り払い価格には出てくる、と国は申し出て、8億1900万円を値引きし、1億3400万円で売っていたことが分かった。

 国民の財産を、恣意的に9億4000万円強を無駄にしたことになる。この事実をあいまいにしてきた男は国税庁の長官に抜擢され、「タダにしてくれ」と頼めるほど強気にさせた女の使い走りを、異例の大出世になる席を与えられたが、これは首相の先金抜きにはあり得ないことだ。

 首相側近の山本一議員は、「国会での疑惑追及を逃れるため」であろうが、「選挙に勝つためには何でも」ありか、と疑問視する。石破議員は「何のための解散か」「北朝鮮情勢の緊迫」を活かした政権固めだろうが、それはおかしい、と反発する。河野元衆議院議長にいたっては、国民との約束であった「出来るだけ丁寧に説明する」をホゴにするのか、と諌めている。

 今なら自民党が勝てる、と見て取り、「これで禊(みそぎ)ができた」と言いたいのだろうが、このような発想をするヒトを首相にいただく一国民として情けなく思う。世界は民度を見つめている。