願ってもない品々

 

 かつて、江戸時代の伊勢参りブームに想いを馳せたことがあった。その1つが、伊勢参りお土産と昼食。徒歩や駕籠での旅だから、土産品は日持ちがしないといけないし、昼食は一時に大勢の客をさばかなくてはならなかったはずだ。そう思っていたのに、実は、初めて伊勢うどんを食した時にはピンと来ていない。初体験の半断食に気をとられていたのだろう。

 もちろんこの時の伊勢うどんを、珍しいタイプのうどんとして週記に載せた。その時に、そのいわれを後藤さんに学び、ハッとさせられている。このうどんなら、事前に準備万端整えておけば、一期に押し寄せる客であれ、次ぎから次と対応できたに違いない。

 次は、土産の品。賞味期限が2日や3日では持ち帰れない。そこで、70年以上も昔の小学校での修学旅行に思いを馳せ、土産にショウガイタを買い込んだことを思い出した。だが、「あれだけか」と思案した。「江戸時代には他にも日持ちがするものがあったのではないか」。

 この潜在的疑問に応えてもらえたのは陶芸家「白陶窯」の村山さんだった。その個展を除いた時に「老伴(おいのとも)」を教えられた。これなら江戸まで土産として持ち帰ることができる。

 このたびの荷物の隙間に、さまざまな品が入っていたが、「なんと」この2つも揃って入っていた。一度は妻に伊勢うどんを、と思っていただけに嬉しかった。

 早速妻に「昼は、この伊勢うどんを」と頼んだ。その時に、既に妻は「昼は、きつねうどんを」と考えていたようでアゲを用意していた。その甘く煮たアゲを、細く刻んで、フライパンでカラカラに炒め、カリカリに近い感触にして伊勢うどん添えた。これが腰抜けのうどんに奇妙に調和した。

 もし伊勢を、もう一度訪ねることが出来たら、この手の伊勢うどんが「あるのか否か」を確かめたく思った。この手の品があって当然だと思う。

 



「老伴(おいのとも)」