後期高齢者検診で苦笑と安堵

 

 人間ドックの世話にはならない方針だけに、主治医としての町医者は定めておきたい。10年ほど前に心臓を患ったが、その時から主治医としての町医者がいない。代替わりと医院の改装があり、名称もスタッフも総変わりした関係で失った形になったママになっている。

 そこで、後期高齢者検診を好機とばかりに腰を上げ、代替わりした医院を訪れ、ここを「掛かり付けの医院とし、主治医に決めたい」と思った。

 不覚にも医師の検診中にケイタイを鳴らしてしまい、出た。大事な用件だったので、つないだ。その数分の待ち時間を、この医師はなるほどと言った活かし方をし、安堵させてくださった。

 「拡張性心筋症は、移植が必要な場合もあれば、天寿をまっとうするケースもあります」との説明もしてもらえた。初めて医者の口から聞いたニュースだが、口任せではないだろう。これに甘えず、私なりの(適度に心臓に負荷をかけ、守る)用心を、と思った。

 身体測定ではささやかなショックに見舞われた。背たけが縮んでいるに違いない、と思ってはいたが、往年より4.5cmも、とは思っていなかった。2週間前に、世話になった学生が、次にバトンタッチする学生に申し送りする会話が聞えてしまったが、それは「小柄な人です」だった。「なるほど」とその時は苦笑だったが、このたびは微笑むことができた。

 これから、この医者に、顔を忘れられない程度に訪れて、出来ればこの医者に看取られながら、自分の布団で死にたいものだ、と思った。ちなみに、この医者は、今は亡き前の主治医の娘婿ではないか。