「軍事研究ノン」

 

 自民党政権は、防衛技術に応用可能な研究を大学に求め、旧来の補助金を削り、軍事研究には手厚い補助金を充てるやり方を始めている。最近、基地政策や原発推進でもよく似た金まみれの手口を採り、すでに沖縄での市長選で、基地推進派を勝利させる成功事例をこしらえた。補助金を、これまでのように県を通さず、直接市町村にばらまく手口の成功事例だ。

 それだけに、この大学での軍事研究問題を危惧するムキが多かった。それは、過去の苦い体験が生み出させた未来への遺産の継承を、金まみれに方式で断たせることだが、京大は立ちはだかった。このところ、清きサムライ・ニッポンの威厳や権威が台無しになりつつあっただけに、朗報と見た。

 「あなたの娘さんや奥さんならどう思いますか」との質問を投げかけた人がいた。最高級官僚がセクハラ問題を生じさせ、その被害者を加害者のごときに仲間内への質問であった。その後も、このセクハラ自体を最高級官僚とその仲間内は認めず、闇に葬りたき地所存と映る。在ったことでも、不都合ならなかったことにしたいのだろう。そのしらばくれ方はどうに入っている。

 この件は、国内事情であったが、これが国際事情であったらどうなっていたことか、と思った。「あなたの娘さんや奥さんならどう思いますか」との質問が、同じ日本人間でないだけにピンときにくく、問題をより複雑にしていたに違いない。国民まで仲間内にしてしまいかねず、共犯者に仕立て上げ、国家の尊厳を傷つけるおおれがある。問題は、それが生じさせる孤立化は、仲間内の結束に寄与しかねないことだ。卑劣な施政者は常に仮想敵国を作りたがる由縁だ。

 それはともかく、このところ、目に余るものがある。国民の財産であり民主主義国家を支える根幹でもある公文書が、現政権と官僚に私物化されていたことが全世界に知れ渡ってしまった。高級官僚の卑劣な態度や猥雑な姿勢も全世界に知れ渡ってしまった。その清算が肝心だと叫びながら、真っ向から阻んでいるのが正副総理大臣であり、その仲間の傷のなめ合いに普請していることも知れ渡ってしまった。

 問題は、これによく似たことが敗戦前にもあったことだ。

 制空権や制海権を失いながら責任者は傷をなめ合い、責任を取らず、権力に綿々としがみついた。その間に、天皇の玉音までに、同胞だけでも200万人からの人命を犠牲にしている。

 これも国家の私物化だろう。現に、本土決戦のために備蓄していた膨大な食料などを敗戦後にすべて仲間内で山分けし、闇市を通してさばくなど、国民を苦しめている。

 今も同じことが刻々と進められているように思われてならない。だが、経済戦争であったのでヨカッタ。共謀罪法がいまだ威力を発揮していないように思われる。なにせ、その効力をよくご存知の末裔が「ナチスのやり方を」などと励まし合って作り出した法律だから、空恐ろしい。

 こうした世の中で、京大のこのたびの英断は光っている。