40年かけて作りあげた
京都・嵯峨野にある「アイトワ」は、森孝之さんが二十歳のころから植樹をし、 週末を使って妻の小夜子さんと一緒に手入れをしてきた庭で、いまは一般に公開されています。約3000平方メートル の敷地には動植物が自生し、食卓にのぼる野菜をつくる畑があります。ごみ、生活排水、屎尿はすべて土に還元するという 循環型の庭です。自然とともに生きる生活について、うかがいました。
孝之さんのお話。 ――アイトワでの生活は、税金以外にほとんどお金がいりません。穀物は別にして、
野菜やくだものは自分たちが食べる分を作れます。屎尿は有機農法の肥料になりますし、ごみも堆肥
にしています。枯れ木や倒木などは燃料として、風呂やストーブに使います。 |
自然を泥棒しない生き方を取り戻す。 ――都会型の生活は自然を破壊する、自然を泥棒する生き方です。地球上の2割のひとが資源の8割を使ってしまっている ――いろいろなひとがいていいと思うんです。見学に来られる方を庭を案内するときも、本当に循環型の生活について聞きたくて、楽しそうだと思われる方だけ前のほうで聞いてください、と言います。わたしたちは、子どもがいませんから、知りたい方に引き継げるものが、ひとつでもあれば、という気持ちです。(小夜子さん) ――人間として持続可能な生き方をしようと思ったら、どういう方法があるか。それは自分は何者なのか、という疑問を解く生き方ではないかと思います。わたしはこれを「人間の解放」といっています、「これがわたしなんだ」という生き方をすることが、みんなに必要ではないのでしょうか。 ――自然のなかで、たとえば、おとうさんが重い石をひとつ動かすのを子どもが見たとします。子どもは、自分にはできないのにすごいな、ということを感じると思うのです。それに好奇心のかたまりのようなときに自然に触れることは、とても大事なことだと思います。(小夜子さん) ――ライフ・スタイルということばがありますね。もとはアルフレッド・アドラーという心理学者が、人間が幼児期に刷り込まれ、教育されたことは、その後の一生を左右する人格につながる、といった意味で使いました。日本語に訳すと「三つ子の魂」なんですよね。ところが、日本ではお金さえあれば変えられるのがライフ・スタイルだと思われています。そうではなく、お金があろうがなかろうが、これだけは変わらない、というそのひと固有の生き方が、ライフ・スタイルなのです。
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クレヨンハウス 月刊クーヨン(2002
9 1) 記事より抜粋
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