スリランカで、アリヤラトネさんが繰り広げている運動で、工業革命を経ることなく次の社会を創出し、移行しようとしています。つまり、ヘンリー・フォードが完成させた社会システムを見限り、フォーディズムが支配する工業社会を経ずに、農業社会から一足飛びに次の社会に移行しようとしています。
サルボダヤは、サンスクリット語のsarva(全員、全体)とudaya(覚醒)からマハトマ・ガンジーが造った言葉で、「すべての人を例外なく覚醒し、解放する」との意味をあたえ、インド人を独立心に目覚めさせました。アリヤラトネさんはこの言葉を、サンスクリット語に立ち戻って「すべての者の覚醒」という意味で用いています。
先週採り上げたジョアンナ・メイシーさんは、アリヤラトネさんが推し進めえるサルボダヤ運動を、フォード財団の助成金をえて調査し、その報告書ともいうべき一書を著しました。その中で、サルボダヤ運動は、個人の目覚めから村の目覚めへ、そして国の目覚めへ、さらには世界の目覚めへと広げてゆく上で仏教をたくみに活かしていることを報告しています。しかし肝心の、何のために目覚めるのか。目覚めてどうするのか、には触れていなかったのです。
その「何のため」をこの報告で明らかにしようとすると、フォーディズムに反する考え方を明らかにすることになりかねません。それを避けたかったのではないか、と私は考えました。ですから、その後のジョアンナ・メイシーさんの著書を紐解いたのです。ところが、サルボダヤ運動を採り上げていながら、そこでも「何のため」か、目的には言及していなかった、とすでに触れたとおりです。そのときに、仏教学者のジョアンナ・メイシーさんも専門馬鹿に落ちいり、肝心のことを聞き逃したのではないか、聞けれども聞こえずになっていたのではないか、と考えた次第です。
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