「ブリコラージュ」
これはフランス語で「手しごと」と言う意味だと教えてくれたのは、パーマカ ルチャーセンター・ジャパンの設楽さんだった。以来、この言葉の響きと意味が
気に入って、時々話題にだしている。この言葉を何かにのせて流行らせたいなあ と漠然と思っている。
先日、単行本の取材で、中村さんに同行させてもらい、群馬県富岡市の竹重百 合枝さんにお会いしてきた。蚕を飼い、糸を紡ぎ、草木染めをし、はたを織り、
着物を縫うという全工程を一人でされる作家の方である。
竹重さんは、取材を受けていい思いが残ったことは殆どなくて、今回も断りた い気分だったそうだが、中村さんの手紙に心を打たれて、応じる気持ちになった
とおっしゃっていた。
お話を伺い、作業を見せていただく中で、この人の内的世界の豊かさに、感じ 入ってしまい、ずっと妙な気分でいた。私が差し出した味気ない名刺をじっと見
て、そこから何か意味を拾い出そうと想像力をはたらかせる様子は、……なんと 表現すればよいのだろう、思いやりに満ちあふれてているように感じられた。
糸を紡ぎながら、私達に話し掛ける。 「こうやって、昔の人はみんな、愛する人のことを思って、思いを込めながら、
黙々と手しごとをしたんですよ。だから、出来上がったものは、すみからすみま で、全部、自分そのものなんです。だから売りたくなんかないんですよ。」
「そう、最初から最後まで全部自分でやる。自己完結する、ってことはとって も豊かな世界なんですよ。世の中、色んな問題が起こってきていますけど、母親
が手しごとを取り戻したら、半分以上は解決するんじゃないかって思うんで す。」 竹重さんは、この事を世に伝えたいと切に感じている様子だった。
こういう技が、殆ど消えてなくなろうとしている。多分、この10年が最後なんだ ろうと思うのだけど………。 私に何が出来るのだろうか?
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