「癒しの島の夏休み」01/10/04
前の会社の上司に誘われて、宮古島を訪れた。この島を「癒しの島」と言い出した人でもある。
事前に沖縄に住む自然計画のメンバーの方から、宮古島に関することを教えていただけた。その中で一番心惹かれたのが、大神島のことだった。神々の住む島として知られる神秘的な島なのだそうである。人口50人くらいの小さな小さな島である。
総合商社という、やたらとロットが大きい話が好きな会社に勤めているのに、私は、小さいことが好きである。福岡正信さんが著書「わら一本の革命」の中で述べている言葉がある。「最小の世界に徹底すれば、最大の世界が開けてくるというのは本当だと思います。」これがとても好きである。また、「量を追求すると中身が嘘になる」というのも真理だと感じている。
去年の夏休みは、沖縄本島の沖合いにある水納島を訪れて、その美しさにすっかり心を奪われた。船で島を去るときの切ない気持ちも、心の片隅の残っている。
さて、沖縄は三度目だったが、今回初めて雨にたたられた。土砂降りの合間を縫って、港までレンタカーで出かけ、港へ着く。船は、1日三便しかない。渡ってしまったら半日帰れないことになる。雨宿りにもことかくことになるかもしれない。少し躊躇していると、丁度雨が小降りになる。これは行けということだなと思って、そのまま船に乗った。
船に同乗していた古老の方に声を掛け、島の話を聴く。何故、神の島と呼ばれるようになったかはよく分からないそうだが、やはり侵してはいけない場所というのが島内にはあちこちにあり、それを侵そうとすると災いが起こったことは度々あったのそうだ。そうして道路建設計画も頓挫し、いまだに島を一周することができない。島には伝承が沢山あって、一部の女性がそれを受け継いでいるのだが、口外されることが殆ど無いので、そのおじいさんもよく分からないらしい。
船の待合用の小屋で雨宿りしながら、小降りになるのを見計らって、山に登る。里の外れから10分ほどの行程だが、ロープが必要な程急な場所がいくつかあり、下は雨でぬかるんでいる。ズルズル滑って足元を泥だらけにしながら、頂きにたどり着く。
宮古島全体がとても平坦な地形なので、この小高い丘からの眺めが一番よさそうである。宮古島全体が見渡せ、隣の伊良部島まで全貌が見える。晴れていたらどんなに素晴らしい眺めだろうかと思う。
私は、霊感がまったくなので、神聖だと言われる場所に立って何か聞こえてくるようなことは無いのだが、それでも、気分がとても晴れて、我に返れるからこういう場所を訪れるのがとても好きである。随分と濡れて、泥だらけにはなったが、心は落ち着く。
翌日は、空港近くにある「石庭」を訪れる。新城定吉さんという方が、啓示のようなものを感じて自分の土地から古い岩を次々と掘り起こしてできたものである。熱帯植物の中に、大きいものは30トン以上もある大小600個以上の岩が林立する不思議な空間である。この存在が口コミで広まり、ヒーリングスポットとして一躍有名になっている。訪れた人は、自分の気に入った岩を見つけて、触って会話をする。そうすると色んなことが分かってくるらしい。
新城さんの説明を聴きながらぐるぐる回っている。しばらくすると、岩に抱きついてボロボロと涙を流す人も出てくる。私は、ある場所に行ったら、すっと目に飛び込んでくる岩があった。
「あっ、あれが俺のだ。」
出会う岩はきっとこじんまりしたものだろうと思っていたが、その岩は予想外
に大きく、猛々しいものだった。
うだる暑さの中で、しばらく岩に手をあてて見つめている。
悩んでいることが意識の中に吹き出てくる。そして、気分が晴れやかになって
いく。
いいんだ。このままで。
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