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原点回帰な一週間 02/11/12

 1年ぶりに故郷の秋田に行ってきた。

帰省の目的は2つで、1つは、参議院議員の中村敦夫さんが講演されるフォーラムに参加すること、そしてもう1つは、これは恒例なのだが、私の「母なる川」、馬場目川にブナを植えるイベントに参加することだ。

中村敦夫さんは、ご挨拶したことがある程度なのだが、偶々、大学が同窓だったり、故郷(厳密に言うと疎開先らしい)が私の妻と一緒だったりするので、一方的に縁を感じてしまっている。そして、中村さんの秘書達は言ってしまえば「同士」である。彼らとは、「日本にも『緑の党』をつくろう!」といって時々集まっては、「桜水産」という価格破壊な居酒屋チェーンを「21世紀の寺田屋」と称して、そこで飲んだくれているのである。

「公共事業をチェックする議員の会」の代表を務められる中村さんが招かれるのは、そこに公共事業の反対運動があるからである。私は、今回初めて、そういう集まりに参加したのだが、この議論がとても面白かった。

「3割自治」という言葉があるが、1次産業主体で大きな産業がない地方にとって、中央から税金を引っ張ってきて、「道路」をはじめとする公共事業を行うことは、人々の生活に直接的に影響を及ぼすことなのだ。だから、よほどのことがない限り反対運動はおこりにくいようだ。

この公共事業という利権をめぐる政治家、官僚、ゼネコンのタッグを「鉄のトライアングル」と中村さんは呼んでいたが、選挙民の生活がそれを下支えするので、これを壊すのは至難の業のようだ。
「この議連の代表は選挙に落ちるというジンクスがあるんです」と中村さんは言っていた。
(もっとも、ゼネコンの位置に軍事産業が入らないだけ、この国はまだ健全だという理屈はあるかと思う。でも、自然破壊は未来の人命を奪うことだから……..)

今回の反対運動は、メディアや商工会の方々が中心となって起こったものだった。「渋滞の時間を7分短縮する為に700億円もかかる地下道をつくるは無駄ではないか?町並みも大きく変わる」。
これに対して、ある行政官はこういったのだそうだ。
「殆どが国庫補助で賄われるのだから、いずれにしたって安い買い物だ。」
嬉しかったのは、この言葉に対する反対者の市民の声である。
「税金であることに変わりはない。」

その日は馬場目川の下流にある大潟村の村長さん宅にお世話になる。そして、いつもの様に、有機農業運動や消費者運動をされてきた人達の酒を酌み交わしながらの激しい議論に巻き込まれて、ヘトヘトになる。

翌日は、いよいよブナを植えに川の上流に向う。

このイベントは今年でちょうど10年。合計1万本の植林をしたのだそうだ。広葉樹を植える運動は全国に広がっている様子だが、ここは草分けの1つだそうだ。10年前に植えたブナを見に行くと、成長の遅い木とはいうものの幹周りが20センチくらいにまで大きくなって、しっかり根も張っている。やっていることが確かに、意味のあることだと納得できる瞬間だった。尤も、植えた後も毎年欠かさず人知れず手入れをしてくれる人達の働きがあってはじめて、枯れずに育ってくれるのだ。

木曜日には滋賀県に日帰り出張した。

川村健一さん達が、滋賀でエコビレッジづくりを本格的にスタートされる。そのキックオフとして国際シンポジウムを開催されたので、それに参加してきた。

デンマークに本部があるグローバル・エコビレッジ・ネットワークのロス・ジャクソンさんが招かれて基調講演をされていた。その他には、欧州通貨統合の現場責任者で現在は決済の為の世界単一通貨「テラ」づくりの運動されているベルナルド・リエター氏も同席していた。

シンポジウムに参加しながら、自分が3年前にやったエコビレッジのフォーラムを思い出した。

大した力もない自分としては、あれからさほど実現のステップを踏む事が出来なかったが、川村さんがアメリカより戻られて、抜群の行動力とネットワーキングの能力を発揮されてあっという間にここまで漕ぎ着けてしまった。感謝である。

そして、思った。

この時代、やっぱり一番大事な事はエコビレッジを作ることではないか?
だって、環境負荷の少ない暮らしを実行できる場があって初めて、次の社会の展望が開けるんじゃないのか?

ふと、先日、環境財団の柳田さんとした会話を思い出した。
「都市化を止められた人間は居ないんですよ。これは最大のテーマです。」
私のこの言葉に柳田さんはいった。
「でも、歴史上、滅びなかった都市もない。」


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