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私には踏み出せない 06/03/19

 若き夫婦に招かれ、名古屋から汽車で1時間ばかりの恵那に出向きました。親子4人に出迎えてもらい、明智鉄道の線路に沿って車で15分ほど走ったところに、開墾や植樹を始めたばかりの1400坪の敷地とログハウスがあり、サンシユの花が咲き始めていました。拙著でわが家の生き方に触れた若き夫婦が、助言を求めて呼んでくれました。敷地は東南に開けており、その一番小高い部分に立って30年後の庭の姿と日本の社会を瞼に浮かべながら、夢を語りました。私のやり方なら20年ほどかかりそうな敷地の造作を、機械の力を借りて速やかにするように勧めました。

 ご母堂が北海道からみえており、6人で夕食をいただきながら、2人の生い立ちもうかがいました。今は2児に恵まれていますが、この2人は若いときに船で中国にわたり、ホームステイをしながら汽車で欧州まで旅しています。それぞれの地で質実な生活を繰り広げる人々に触れ、覚醒したようです。自己完結度の高い生き方を目指し、幼児を抱えながら脱サラをし、家具職人をしながらに開拓者のような生活を始めたわけです。世の中には「自分には踏み出せない理由」をいろいろと考える人が多い中にあって、こうして踏み出した2人ですから、わが家の庭・エコライフガーデンの本質を即座に理解してもらえそうに感じ、近き来訪を促しました。きっと今頃は、土産代わりに持参した『庭宇宙』に読みふけってもらえていることでしょう。

 土日は大垣市の市民環境フェスティバルに当てました。協賛の事業者や市民活動団体の協力を得て、手作り度を飛躍的に高めたフェスティバルでした。その熱意や温かみは観る人の心に伝わるのでしょうか、大変な賑わいでした。大勢の子ども連れの親子が目立ちましたし、子どもたちの活動発表も増えました。そうした会場で大勢の人と立ち話をしたのですが、環境活動に熱心に取り組む私と同年輩あるいはそれ以上の人の多くは、よく似た意識の持ち主のようだと感じました。子育てには失敗したが、孫だけはまともに育てたい、との願いの持ち主です。

 会場を抜け出してレジ袋ないない運動の植樹場所や、あるお宅を訪ねたりしました。訪ねたお宅は、短大を辞めた年に「さくらんぼの木」やメダカをもらった人のお宅です。親木のさくらんぼの木はすでに開花していました。池の数が増えており、淡水魚の種類や数が増えていました。職業は金型造りですが、このたびは工場で最初に購入された工作機械も見せてもらいました。ご夫婦で操作されたわけですが、この2人の掌からしか生み出せない技も磨かれたようです。この機械を今もしばしば用いているとか。お土産に草もちやバイカモをもらって辞しました。

 月曜日から平常の生活に戻りましたが、朝夕は冬に逆戻りです。氷が張っており、好天なのに雪が舞ったりしました。わが家の庭でもサンシユは咲いていましたが、さくらんぼの木は1〜2輪の蕾が膨らみかけた程度でした。火曜日の午後から妻は東京での個展に出かけ、私は留守番です。自分の食事の準備だけでなく、イヌの世話もしなければなりません。でも、おでん、カレーライス、青菜と揚げの煮物、筍やレバーの煮付けなどを多い目に作ってもらいましたから、そう手間はかからずにすんでいます。問題は風呂です。自分のためだけに薪で沸かすのは億劫です。

 庭仕事では、シイタケのホダ木に1000個の種駒を打ち込み、本伏せをしました。寒空の下で、手をかじかめながら根を詰めたものですから見事に風邪を引きました。老人が無理をすると肺炎になる理由が分かりました。だからその後の庭仕事は草抜き程度にとどめ、睡眠を十分にとり、週末の丹後行きに備えています。地球デザインスクールでの基礎講座です。来客は本金曜日に6人の庭の見学者を迎えた他は室内で済ませられる用件ばかりでしたから助かりました。ところが、犬には手こずっています。いつもと同じように力任せに引っ張るからです。

開拓者精神にとんだ若き夫婦の子どもが、夕刻にストーブの前で行水を始めました。この下の子をおんぶした奥さんが、日のある間にスコップでシロモジの苗木を掘り起こし、土産にくださいました。もし枯れたら「訪問時に(別の苗木を)持参します」といってもらっています。

優雅な夕食でした。これは突き出しです。左から自然酵母のパン、ゆべし、スモークドチーズ、イノシシの肉のサラミソーセージです。イノシシのサラミソーセージは奥さんの手造り。スモークドチーズは家具材の桜のチップを生かしたご主人の手作り。ゆべしとパンは村人の手作りであったように記憶しています。
大垣の知人の庭ではすでに花を咲かせていた「さくらんぼの木」の親木です。この木は、今も豊かな自噴水が湧き出ることで知られる神社の近くで育っています。この一枝から取り木された苗木がわが家の庭で根付いているわけです。
この知人が若き頃に最初に購入したという工作機械です。今ではさまざまな機械が据え付けられていますが、奥さんは夫婦で使い始めたこの機械がとりわけいとおしいようすでした。

市民環境フェスティバルでは、今回もある婦人団体が、自分たちで育てた野菜を用いた環境鍋と雑穀ご飯を振る舞い、お椀や箸などを持参した大勢の人たちに行列をしてもらいました。

わが家のサンシユも咲きました。この木の剪定をした昨秋は、初めて実を少しですが収穫することがましたのでサンシユ酒をつくりましたが、飲み頃を迎えました。

種駒を打ち込み、本伏せしたホダ木(左)と、その上にクヌギの小枝を被せて乾燥させないようにした状態です。