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アイトワ循環図
自然と虫と人間 08/10/19

 妻が居間の窓先で、落ち葉を利用して小さなクモが見事に巣を張っていることに気づきました。それからあと、次々と自然の美しさや不思議が目にとまりました。ヘビウリがとても恐ろしげな色彩になっていました。この不気味な姿でどのような動物を惹きつけ、種まきを手伝わせるのでしょうか。ヌルデの木に見事な虫こぶを見つけました。これは昔の人が重宝したタンニンをたくさん含んでいます。イタドリの花をしげしげと眺めました。北海道の遠軽からイタドリの蜂蜜を送ってもらったおかげです。砂利敷きのパーキングにアメリカハナミズキとサンシユの赤い実が散らばっていました。小鳥がついばんだときに落としたようです。

 妻は16日から人形教室展でしたが、その追い込みが始まった頃から連日、風呂は私が焚きました。追い込み作業に駆けつける生徒さんが、タクシーに乗って「アイトワへ」とお願いしたところ、さんざん毒づかれたそうです。その原因は17年前の私の言動にありしたから、生徒さんには申し訳なく思ったり、運転手さんには気の毒に思ったりしながら、苦笑しました。先週レストランに招かれたときのことを思い出したのです。友もよく似た逆恨みの話の体験者でした。

 今週は、講演が2度もあり、少し疲れましたが、他は比較的穏やかな日々でした。それは、冬野菜のために畝を仕立て直す作業が中断しているおかげか、せいです。確かに、今頃まで露地栽培で美味しい焼きナスや身がしまった完熟トマトを楽しめているのですから、おかげでしょうが、残暑のせいでもあるわけです。冬野菜への切り替えが思ったように進んでおらず、水菜や壬生菜にいたっては全滅で、惨憺たる状態に追い込まれています。

 白菜は思った通りの経過です。直播きした種からは1本しか残らず、今はそれが一番順調に育っており、虫が食っていません。義妹にもらって最後に植えた苗は、それなりに育ちながら、成長が芳しくないものから順に虫に襲われています。これは、虫の立場から考えれば当然でしょう。来年に備えて、立派に育ちそうなものには手を出さずに種を結ばせるでしょう。同じ食べるなら、成長が遅れて病気にかかりそうなのから順に始末し、他に蔓延させないためでしょう。それは種を絶やさないための本能であり、自然の摂理ではないでしょうから。

 その点から言えば、今年の水菜と壬生菜は異常です。すべて虫に食べられ、全滅です。水菜と壬生菜の全滅は、畑仕事を始めて半世紀になりますが、初めてのことです。義妹も、1週間ぶりに夫と亀岡の畑に出かけ、苗床だけでなく畑に植え替えた分も全滅していたことを確かめました。何か原因で、こうまで虫は食ってしまったのか。人間が次々と野生生物を絶滅させていますから、それに倣って虫まで将来世代のことなど考えない人間化に走っているのではないでしょうか。

 週に2回も講演の機会に恵まれました。水曜日の夕刻は、ある県が催す県民教育の一環で、演題は「地球人としての生き方、エコ生活の勧め」でした。土曜日は京都の有名高校で催されたもので、45年間も引き継がれてきたクラブの記念集会に呼ばれたものです。若い人に夢を与えたくて構想した話を用意しましたが、若い人の比率が少なく、少しさびしい思いがしました。

 来客にも恵まれました。地産地消型木造建築の普及を夢見る人たち、フランス人を伴って京都案内中の知友、そしてひょっこり訪ねてもらえて短大時代の教え子と、レストラン経営に携わっている素敵なご夫婦です。講演の資料作りや風邪など、それぞれ理由は別ですが、十分な応対ができなかったのが心残りでした。週の半ばから喉痛に悩まされています。

 新聞で京都を愛する建築家の元気な姿に触れました。京都の本質を語れる人ですが、近く市内で開かれる無料の講演会では、京都の遺伝子を語ってもらえるそうです。楽しみです。
 
くもの巣。小さなクモが、3点を支柱にして巣を張ったのですが、なんと下の支柱は宙ぶらりんです。重石に落ち葉をぶら下げていました。なぜこのようなことになったのか。偶然が作用していたとすれば、その時点に立ち会いたかったものです。

ヘビウリの色彩。赤と緑のまだらになったときも驚きましたが、黒が加わりさらに驚きました。このような状態でぶら下がっていたら、小さな獣なら恐れることでしょう。逆に、だから安心して種をつば見に来る鳥がいるのかもしれません。鳥は一般的に赤色が好きです。

ヌルデ(ウルシ科)の虫こぶ(五倍子・ごばいし)は、アブラムシの一種が卵を産みつけたことで生じた細胞の異常増殖です。ヌルデはタンニンをこぶに蓄積し、アブラムシを追い出そうとしますが、羽化するまで居座ります。そのタンニンを、人間は鉄漿(お歯黒)、黒の染料、薬、インクなどに生かしてきました。お歯黒は歯周病や虫歯の予防になったとか。

イタドリの花。ひょっとしたら、花の時期は過ぎて、種を結んでいる状態かもしれません。気づくのが遅すぎました。来年はもっとしっかりと観察します。

アメリカハナミズキとサンシユの赤い実。小鳥がやってきて、ついばみそこねた実をポトポトと落としています。アメリカハナミズキの実の果肉はナンテンに煮ています。サンシユの実はグミやユスラウメのようにジューシーです。サンシユの実は焼酎でつけると強壮剤になります。


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立派に成長して虫に狙われていない白菜@は、唯一の直蒔きの生き残りです。最後に苗を植えた中で、成長が悪いのが虫に狙われ、レースのようになりましたA。その前に、妻がポットで育てた苗を植えたぶんは、被害が少ないようです。要は、自然界では、うまく成長しそうにない、との隙を見せたら、生存権を脅かされるようです。

白い花を咲かせるゲンノショウコが、庭でずいぶん増えました。さまざまな薬草に囲まれた生活は、なぜか心を落ち着けられるような気がします。