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アイトワ循環図
エピローグと選択 08/10/26

 アイトワ塾の仲間のおかげでよい週初めになりました。風邪で、先週の木曜日から庭に出たのは温室の水やりとメダカの餌やり程度でしたが、妻の人形教室展に駆けつけることができたのです。日曜日恒例の作業を早めに切り上げ、まず近代美術館の「生活と芸術−アーツ&クラフツ展」、次いで教室展、コーヒータイム、陶芸展、そして酒房にと連れまわしてもらえたのです。

 「アーツ&クラフツ展」ではその運動の奥行きとウイリアム・モリスの美意識に触れる思いがしました。教室展は最終日でしたが盛況で、230点近くの源氏物語をテーマにした人形が出迎えてくれました。「よくぞここまで」と圧倒され、人形教室の皆様の連帯パワーに感心しました。ちなみに、これらの人形は翌20日から12月12日まで、スケールは3分の1ほどですが、京都駅前のメルパルクの1階フロアーで展示されています。陶芸展は、知人の息子さんの個展で、いずれ親子でアイトワに訪ねてくださりそうです。酒房は聞きしに勝るお任せ料理がでましたが、今月26日で店じまいとか。このところ京都では店じまいする飲食店が増えているとか。

 風邪は結局週末まで尾を引き、最悪の状態は火曜日でした。しかし火曜の夜にはアイトワ塾の予定が、火・水の2日間は防火講習の予定が入っていました。にもかかわらず、3つのおかげで無事に乗り切りました。3つとは、講習会場で開いた妻の手造り弁当、その夕刻妻に駅から直接連れて行かれた亡き両親の主治医、そしてアイトワ塾です。弁当は、「明日も食べたい」と思わせました。町医者では、その心地よさを味わいました。アイトワ塾では本当の豊かさを議論しましたが、次の本の原稿がエピローグを残すのみとなっていましたので感慨深げにされたのです。

 次の本のエピローグでは死生観をあからさまにすることになりました。おかげで人生のエピローグを視野に入れた生き方を貫けそうな気分です。折りあいよくというのでしょうか、永久歯を1本失いました。これで残りは26本、いましばらくは自分の歯で人生を咀嚼できそうです。

 アイトワ塾では本当の豊かさだけでなく、理想と現実のギャップも話題になりました。私の人生は、このギャップや矛盾をなくすための模索の連続でした。ですから、風邪など吹っ飛んだ気分で議論に熱中しました。まず「ぶれない人生目標を見定めようと努める」、「目先の誘惑に負けない」、そして「自力本願」、この3つが矛盾をなくす課題と私は思います。目先の誘惑の問題は、優先順位といい直せますが、時には間違っても良い。予期せぬ喜びに浸れたと思えばよいし、己の身の程を知ったと思えばもっと良い。軌道修正の機会にして人生目標を絞り込めたらさらによい。そんなことを、事例を引いたり、次のテキストを推奨したりしながら説明しました。

 他にもエピソードが幾つかありました。上記の矛盾を見出せない友の1人から手土産をもらいましたが、その包装での優先順位に爽やかさを感じました。毎年学生を実習引率してくださる教員に、2人の学生を伴って訪ねてもらいました。秋の期間、アイトワでアルバイトをしてもらえたらいいのに、と思いました。NZから帰国したばかりの女大生?から、私がNZでホームステイした先で滞在したとの便りがあり、近くアイトワを訪ねたいと望まれました。先週、落ち葉を活かしクモがいましたが、巣を張り直しました。わが家の暗渠システムの1つを模型にしました。次の本は、写真説明と挿絵つくりを残すのみとなったわけですが、その挿絵の1つを描くために、庭に埋め込んでいる暗渠の1つ・地下水を自動的に集めて蓄える仕掛けの模型をまずつくったのです。
 
 結局庭仕事は、ミズナの苗が少し手に入り、雨の合間に植えつけ、その余勢を借りて、温室で自然生えしたハナタバコの苗で鉢植えを一つ造り、さらに柿の葉寿司に用いるきれいな葉を拾い集め始めただけで終わりました。この散らかった庭に、グループ見学が2組ありました。

 
妻が出展した執筆中の紫式部。その周りに、アイトワ塾の仲間の1人、簾職人の網田さんが創って贈ってくださった花生けと簾を使わせてもらいました。教室展のテーマは「源氏物語1000年紀記念展」でしたが、幾つかの名場面が再現されていました。これとは別に、各人の自由作品が出展されており、異なる興味を惹かれました。

久しぶりに妻に造ってもらった弁当。2日間受講しないと修了書をもらえない防火講習でしたが、初日の午前中にしんどさがピークになり、中断を考えました。しかし、昼にこの弁当を開き、「明日もこうした弁当を食べたい」と思い、踏ん張りました。食事とは、栄養素の総和や美味しさ、いわんや高価さや見かけよりも、もっと大切な要素があるように思いました。
 

山栗。庭で拾い、翌日の弁当に用いられました。今年は不作の上に、頭の黒いねずみによく盗られます。風邪のために事前に拾っておけないせいです。10〜20人に10個とか20個ずつ拾って帰られるだけで、我が家で冬越しをさせるカチグリを作れなくなることがあります。もちろん悪意のない行動でしょうが、その延長線上に自然破壊が、共同体の崩壊問題が、ひいては工業社会の破綻問題がありそうだ、と見ています。

甲種防火管理新規講習を受け、消火器の使い方の実習や震度7の体験もしました。アイトワは来客が多く、しかも喫茶店のお客さんは不特定多数です。いざというときの被害を少しでも減らしたいし、消防の人たちの苦労を理解したかったので、2日を割きましたが、よかったと思います。とても熱心に教えてもらいました。

暗渠システムの1つ。「バカみたい」といわれそうですが、水を集められる保証はなかったのに、このシステムに160万円を投じました。おかげで、常に2トンほどの水が溜まっています。とはいえ、得られる水の量を水道代金と比較するとバカみたいな話です。でもこれが理想と現実のギャップをなくす上で超えなければならない、自己責任の下に果たすべきリスクの1つだと思っています。

先週、霧吹きで脅かされ、逃げ出したクモが帰ってきたのでしょうか。ぼろぼろの巣を活かして張り直しました。その姿を朝露のおかげで写真に収めることができました。もし逃げたクモではなく、他のクモが、これ幸いにと他人のぼろぼろの巣を活かしたとすると、もっと面白い話ですが。

ある有料老人ホームの人たちをお迎えしました。庭の案内と、半時間ほどこの庭造りを通して得たことなどを話させてもらいました。小雨勝ちの1週間でしたが、このグループを迎えた午後は日が差してきて、木陰のほうが過ごしやすかったほどでした。