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消費者ごっこ 05/11/27

 土曜日の丹後は「これが丹後か」と思い知らされるような天候でした。雲が低く垂れ込み、断続的に小雨が降りました。地球デザインスクールでは終日ストーブに火が入っていましたが、廃校跡を生かしている上に、ペレットストーブが2室にあるだけですから、寒さに強いはずの私も震えっぱなしでした。レクチャーの最中にアラレも降ったそうです。

 テーマは相互扶助でした。私は、社会が所得倍増論に沸き立つ中で総合商社に就職し、躍起になって相互扶助関係を不用にするようなことをしています。ファッションを駆使して服飾品の既製品化を押し進め、人々を一色に塗りつぶそうとしたのです、要は、親や配偶者などに頼らなくてもお金さえあれば何でも欲望が満たせる商品やサービスを考え出し、人々を消費者化すれば歓迎される、と気付いていたからです。それが所得と消費を急伸させる秘訣と思われました。今から思えば、それも家庭崩壊やシングルの増加を促す要因の1つだったのかもしれません。

 私はこの過程で、アメリカでアーミシュという宗教の一派に触れ、やがて書籍を通してアーサー・ケストラーの存在も知ります。前者は家族や地域住民間の相互扶助に生活基盤を据え、後者はホロンという理論に人類安寧の道を見出しています。ホロンとは、ギリシャ語の全体を意味するホルと、個を意味するオンを組み合わせた造語で、「全体と個の調和」を意味しています。この両者を知ったときに、私は勇気を得ています。なぜなら、私生活では「消費者ごっこ」で終わりたくないとの想いの下に、薪風呂を残すなど生産活動に勤しんでいたからです。やがて相互扶助関係が誘う喜びを報酬とするまでになっています。その後、この喜びを企業ぐるみで愉しんでいるかのような印象を受けたパタゴニア社と出会います。この企業とアーミシュには共通点がありました。アーサー・ケストラーのホロンの理論を彷彿とさせるところでした。

 そんなわけで、土曜日のレクチャーはまずアーミシュとパタゴニア社の訪問記を映像で紹介し、その上で三者を例に引きながら相互扶助の意義などを語りました。翌日はフィールドワークにあてましたが、「丹後では珍しい」好天でした。自然石を拾い集めて囲炉裏を作る狙いをまず説明し、その上でトラックやバンを駆って石拾いに出かけました。野山を駆け回って集めるつもりの石が、工事現場の石捨て場で難なく手に入り、次回に予定していた囲炉裏造りまで済ませてしまいました。こん回の集いで、かつてアイトワを訪ねた学生の印象記を手に入れており、帰宅してから読みふけっています。引率された先生が参加されていたからです。

 目が回るような一週間でした。観光シーズンのピークでしたので、庭掃除にも精を出したからです。サンシユやキハダ、ニセアカシアやニッキの枝もさばいています。その残滓を、つまり木切れや落ち葉を腐葉土や燃料にする作業に約2日を、腐葉土や燃料にならないクズを灰にするのに延べ半日を割きまし。その間にサツマイモを掘り、焼き芋を楽しんでいます。ミョウガやジンジャーあるいはウコンなど霜に弱い植物は刈り取って堆肥の山に積みました。事情があって、数本のクヌギの頭を落とすことになり、その作業に取り掛かりました。サツマイモのみずみずしい葉柄をとりおいて、夕刻に掃除をして今年最後のイモヅルのキンピラを作ってもらいました。

 愉しい人との触れ合いにも恵まれました。来春始まるレクチャーの紹介文づくりや雑誌の取材、あるいはときどき相談事に乗っている社長さんとの忘年会などもそうでしたが、観光客として訪れた人の中に、時間を忘れて旧交を温めた人たちもいます。その一人は、アパレル企業の社長を担当していたときにお世話になった九州の百貨店の女性で、19年ぶりの再会でした。観光シーズンの妻はいつもてんてこ舞いですから、連日私が風呂沸かしを担当しています。

地球デザインスクールのトロッコが重宝しました。車では入れない中庭に、石をトロッコで運び入れ、囲炉裏を作りました。このトロッコは、子ども引き付ける小道具として常日頃は生かされるようで、手造りの天蓋車も完成していました。自然と親しむ場に幼児を誘う工夫の一つと見ました。

1440gの小麦を製粉しました。手前から、フスマが大部分の全粒粉300gr、細かいフスマが入った全粒粉300gr、この両者を混ぜたものが一般的な全粒粉とか。奥はメリケン粉840gr。市場で売られているメリケン粉は、このメリケン粉をさらに細かい篩で通して非常に細かいフスマも取り除いているとか。地球デザインスクールには、自動石臼もあります。

サンシユを剪定したおかげで少し実を収穫できました。サンシユ酒を造ろうと思います。もっと熟れると透明感がでます。半ば落葉した時期に、大きな木に点在するこのルビーのような実を、朝日や夕日の逆光で眺めますと、きらきらと輝いてみえます。
樹木の治療もしました。左は治療の途中、右は治療後。この一帯には自然生えのミョウガがあり、夏の間はいつも根元が日陰となって湿気ますから、ミョウガを刈り取ると毎年のようにこの病気(生木に寄生する一種のキノコ?)が出ていたことに気付かされます。張り付いたスポンジ状の病巣(器の中にめくった病巣が入っている)を大まかにめくりとった上で金ブラシでこそぎとり、石灰硫黄合剤を塗ります。治療が早ければ、木を救えます。今回は8本治療しました。

 

収穫し終えたサツマイモです。この半分ぐらいを先に掘り、焼き芋にしています。今年は10本植えました。手前は最後のマクワクワです。大きい方は、皮を剥きとって5ミリぐらいの厚さにスライスし、塩コショウで炒めてもらいました。軟らかいズッキーニのような味わい、といえそうです。
コーヒーかすがたくさん出ました。いつもこうして畝の肩にまき、紙フィルターを被せています。紙フィルターは乾くとめくりとって焚き火で燃し、灰を畑に鋤き込みます。コーヒーかすは次に畝をたてるときに鋤き込みます。手前の畝は芽が出たばかりの小麦、中ほどの畝は2度目のカキチシャと水菜など、奥の畝には3度目のカキチシャの苗とエンドウマメを植えています。

土曜日の朝は、この紅葉の下でサンドイッチとカフェオレの朝食でした。サンドイッチは、ツナ、スクランブルエッグ、ソーセージと野菜の3種でした。この紅葉の下に木陰のテラスがあります。目を転じると、いつも父が昼寝をしながら眺めた3本の色違いの楓が見えます。