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養蜂と地元とアーボリカルチャー 09/09/27

 素晴らしい技術や初めて触れる植物との出会いに恵まれた1週間でした。日本ミツバチの養蜂とアーボリカルチャーを目の当たりにし、オオモクゲンジ、タムシバ、そしてアカンサスの苗木をもらったのです。その上に、庭の手入れについて私は新たなノウハウを身につけました。

 長年の夢であった養蜂が現実になりそうです。先週土曜日の午後のことでした。農村文化の研究家の案内で、綾部市の志賀卿(しがさと)に出かけ、日本ミツバチの養蜂を見学しました。来春の話ですが、アイトワの庭で養蜂が始まりそうです。キンリョウヘン(ランの1種)の鉢植えと巣箱を庭に持ち込んで1〜2万匹の日本ミツバチを呼び寄せ、1郡で棲み着かせる作戦です。

 先週の援軍・4人の学生には、切り取った木や竹を積み上げておいてもらいました。その山を見て妻は途方にくれたようですが、私は半日かけて8つに仕分け、妻を驚かせました。妻の目にも、あと片付けは時間の問題、と写るようになったようです。これは立派なノウハウでしょう。

 9月5日に丹後の一行を迎えましたが、そのときの案内役をした女性の夫が空師だと知り、このたび一家を迎えました。おかげで「アーボワーカー」という職種とその役割を知っただけでなく、家族のあり方にまで想いを馳せることができました。この旧知の女性はアメリカに留学し、一般紙の記者として活躍した人ですが、今は空師の妻であり、一児の母です。その夫は、「家に巨木があることがステータスになる時代が日本にも来てほしい」と夢見ており、私は欧米での体験をありありと思い出しました。またこの父親は、1歳と3ヶ月になるわが子が父を探し求めていることに気付くと、高木の樹上から「ハーイ」と応えていました。

 この1週間に、3種の苗木を手に入れました。養蜂の見学時にもらった密源となるオオモクゲンジの他に、タムシバとアカンサスです。タムシバは、同志社大学で助手をしてもらった女性にクルミとヤマシャクヤク(以前にもらった)の植え時を電話で問うと、その日のうちに持参してくれたものです。山に入るときはいつも一緒という仲間同道でしたから3人で庭をめぐり、それぞれの植え付ける場所を見定めました。アカンサスの苗は妻が知人からもらったものです。オオモクゲンジはしばらくポットで育て、アカンサスは鉢植えにしました。

 地元での緊張を伴う講演を依頼された翌日、地元紙の朝刊に、過日取材を受けた記事が出ました。名実ともに地に足がついたような感じになり、とても嬉しかった。66年間も棲み続けながら、ウイークデーは遠距離通勤でしたし、休みの日は庭づくりに専心してきましたから、地元の人たちとの親交を深められなかったのです。それは浮き草のような心境にさせてきました。

 肝心の庭仕事ですが、学生が切り取った竹や木の仕分けとアカンサスを鉢に植えただけでなく、さまざまな作業に手を出しました。半日がかりになったビオトープの土手の手入れ。ヤマシャクヤクの苗木の植え付け。一畝耕してチマサンチュウ(かきチシャ)の苗の植え付け。学生が切り取った円卓上の植木のあとの補修。花をつけたイネ科植物を目ざとく捜して除草する、など。

 他に、遠方の大学から講演の声を掛けてもらったり、短大時代の教え子、大学時代の仲間、アパレル時代の仲間夫婦、そして過日の茨城講演で耳を傾けてもらった人に夫婦で訪ねてもらったなど。また、ある機関誌の取材班と2日にわたって語らいました。大学時代の仲間は関東在住ですが、大阪で開かれた作品展のついでに京都駅で途中下車してくれたものです。居酒屋で一献傾けながら、生き急いでいる心境や病気をしたときの奇妙な体験を教わりました。

 これから同志社大学に出かけます。3年にわたって繰り広げられた「ソーシャル・イノベーション型再チャレンジプログラム」の評価委員会です。最終年度ですから開講式典から参加します。
 
養蜂の見学時に、山ブドウ畑も見学しました。山ブドウの木は雌雄があり、蔓はとても大勢に成長します。かつて紋別の友だちから、野生の山ブドウを採ってぶどう酒をつくっていると聞きましたが、味わいたくなりました。じつはこのたびの見学時に実を一粒とって口に入れようとして叱られて、とても反省させられました。

1匹の蜂といえどもおろそかにしない養蜂のあり方に、とても心を惹かれました。わが家ではかつて1群の日本ミツバチをもらう話があったのですが、その話は「逃げられてしまった」との理由で流れています。西洋ミツバチと違って、うっかりすると1群ごと逃げられかねないとか。

アーボワーカーが示した木とその周辺の環境にダメージを与えない知識と技術に脱帽です。アーボリカルチャーとはラテン語のアーボリかれ生まれた言葉で、樹木の栽培と管理を意味しています。選木、植樹、手入れ、治療や伐採などを適切におこなう技術や、樹木がさまざまな環境に適応する力、その力を上手に生かす知識などを包含した言葉です。その体現者がアーボワーカーです。


アーボワーカーとは樹木栽培技術者と訳してよいでしょう。このたび迎えたアーボワーカーは趣味のロッククライミングの技術と装具をうまく生かしていました。実は、切り取ってほしい太い枝が、山の桜の生木の枝があったのですが、タイミングが悪いといって断られました。切り口から悪い菌が入りにくくなる時期を待て、といわれたのです。

友人が届けてくれたおいしいおはぎ(お萩)。「また、これが最後かもしれない」といいながら「母が作りました」とのメッセージが伴っていました。私の母も、いつもそういいながら作ってくれたものです。春になると「ぼた(牡丹)もち」をもらいます。

アカンサスを目の当たりにしました。古代ギリシャや古代ローマの神殿の柱頭などで親しんできましたが、その生きたモデル(左)を見たのは初めてです。オオモクゲンジは初めて知る植物で、近く蜜源である花を庭で咲かせるのが楽しみです。わが家に住んだ蜜蜂には何十種類もの花の蜜に親しませてやろうと願っています。もちろんその蜜のお裾分けにあずかりたい。

タムシバの苗木は2種ありました。挿し木と実生です。挿し木で育てたタムシバ(背が高い鉢植えの苗木)は、「おそらくこれが日本で唯一でしょう」とのことでした。挿し木で増やすのは至難の業のようです。居間の窓先に植えることになりました。その右の数本の実生の方は、クルミを植えつけるために切り開いているところに、ばらさずに植えつけ、株立ちのように仕立てることになしています。