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アイトワ循環図

意図、偶然、そして賜物 11/07/31

 今は夏虫の絶頂期。その賑やかな合唱で毎朝5時頃に目覚めます。やがてこの合唱にセミが加わり、山鳩が、さらには6時前には小鳥が、と続きます。そのたびに、曲目だけでなく旋律までが変わったかのような印象をうけます。この多様な旋律は、2〜3の種類を除いた多様な草を、庭のどこかで残してきた賜物かもしれません。「この草しか食べられない」といった夏虫もいるかも知れない、などと思ってきたからです。

 今週は、2冊の書籍にとりこにされたり、異常なまでのサルとイノシシの襲来に泣かされたりした一週間でした。しかし、日々のありように目を移せば、実に多様な一週間でした。週初めは来客毎にガラリとかわった話題に、月曜日はしばし没頭させられた庭仕事に、そして火曜日はゆったりした昼食に、と心ひかれることが次々とかわりました。

 最初の来客は、この時期になるとうなぎの蒲焼きを届けてくれる友人でした。彼は幼少期を水俣で過ごしており、海で魚を捕り、ボタ山で石炭を拾い、一家を支えています。魚を捕りながら「畑が欲しい。野菜を作りたい」と願ったそうです。母は病弱な父に代わって働きに出ており、彼が「母の帰りを待ちながら食事をつくった」とか。その彼が「本当は豊かな生活でした」と語ったのです。お金がなくとも「海を便りに生きて行けたのです」と。やがて母親は水俣病で亡くなり、彼は後遺症に悩んでいます。日本では今、これと似たことが顕になり始めているのでしょう。この日、最後の来客は富美男さんでした。

 月曜日は、日がある間は庭仕事に没頭。まず、はびこりすぎた若木の切り取り、次いで水槽を掃除するサイホン作り、除草と冬野菜用の畝作り、さらには入浴剤に用いる薬草や香草刈りなど、思いつくままに好き勝手な動きしています。なかでも、2つ目と3つ目の一輪車階段作りは、偶然のいたずらに創造性を掻き立てられ、予期せぬ成果を得ています。

 火曜日の昼食はお好み焼きでした。それは週初めに2度も訪ねてもらった富美男さんのおかげです。1度目は夏キャベツやタマネギなどを届けてもらい、その時の会話が2度目の来訪を誘ったようです。サル避けネットを持参してもらい、2人で富有柿の木に被せたのです。その時に「あのキャベツで」と、真夏のお好み焼きを思いつきました。その夜はアイトワ塾でした。次回から『次の生き方』の再読を提案しました。3・11の天災や人災が前回とは異なる視点から読み取りたくさせるはず、と思っているからです。

 水曜日はアイトワ塾の仲間と3人で4時間余に及ぶ夕餉を楽しみました。4月のアイトワ塾に招いたいわき市の一家がレストランを始めたのです。TOSCAという店名は調理担当の姉妹の名にちなんでいます。姉妹はまるで調理の即興詩人です。有機栽培野菜は自然条件に敏感に左右される偶然の賜物です。その賜物を姉妹は見事に活かしていました。

 木曜日も特別の日になりました。激しい雷雨もさることながら、先週初めて迎えた若者の1人が、庭仕事の助っ人として訪ねてくれたのです。彼が選んだ仕事は、コンクリート製の踏み石を、躓きにくいように並べ直す作業でした。彼は予期せぬ創造性を発揮したのですが、雷雨が作業を中断させ、それがデザイン修正をする機会と予知を与えました。もちろん雷雨の間は対話の時間になりましたが、実に楽しい時間でした。

 金曜日は友人の快気祝いで、土曜日は「M・O・H」の座談会で、と続けて夕刻から外出することになり、庭仕事は控えています。なぜか庭仕事に取り組む気力がわかなかったのです。それはきっと、次週のために体が英気を養おうとしているのだと思います。

読みふけった2冊の本は、那須からの帰りがけに友人からもらいました。左は友人の実妹の詩集。17歳でこの世を去った若き詩人の遺作集。右は、この若き詩人のことが多くのペイジを占めている恩師の著作。この2著を読み進むうちに、那須でココロ惹かれた友人の陶芸品を思い返し、ココロ惹かれたわけがわかったような気持ちになりました。

今週最初の畑仕事は、5本植えたモロヘイヤの1本の整枝でした。それは大胆な収穫の仕方でもあるわけです。その葉や新芽は「かて飯」になりました。その日最後の畑仕事は2本目のモロヘイヤを整枝し、その分は富美男さんに持ってかえってもらいました。写真は週末に、手前から3本目の整枝をした時点のもの。トウガラシと共に最盛期です。週初めに整枝した手前の2本は、奥の2本の整枝が終わった頃には再生しているでしょう。


初めて目にした虫

手提げ袋

ナナフシ
週初めに、初めて目にした虫が居間にいましたが、週の半ばに「この虫がアイデアソースでは?」と思った手提げ袋が目にとまりました。アイトワ塾生の財木孝太さんの持ち物でしたが、それは「セミ」をデザインしたものでした。今週、居間で観た昆虫は他に、ナナフシ、クモ、そして何かの卵、など。

クモ

何かの卵

富美男さんにもらったキャベツと、そのキャベツを使ったお好み焼きの昼食。初めて夏にお好み焼きをつくりましたが、木陰はとても快適な時間にしました。冨美男さんとは2年ほど前に再会し、親交が始まっています。このたびのゆったりした気分は、66年前にさかのぼる思い出話に花を咲かせました。

水曜日の夕食はTOSCAで。

木曜日に来てくれた助っ人学生が手がけた仕事は、コンクリート製の踏み石を用いた小径の仕立て直しでした。この曲線の方は、雷雨で中断されています。直線の方は、踏み石ごとの高低差をなくす作業でしたが、彼は完成させました。これらコンクリート製の踏み石は、30年余前の手作りですが、これまでの並べ方では躓きやすかったので、加齢対策の一環として補修しています。

土曜日の夕刻のことです。ゴーヤを収穫して返ってきた妻が異常でした。なんと、ここまで茂ったゴーヤやヘチマの棚に、青大将がぶら下がっていたというのです。右手前はキュウリの支柱。左端は三度豆の支柱。その間にオクラが育っています。