アイトワの喫茶店
1986年4月5日、人形作家の私・森小夜子は屋内完全禁煙の喫茶店を開店しました。わが国最初の屋内完全禁煙飲食店といわれています。
近所の5人の主婦が日替わりで経営にあたるような喫茶店ですが、今もこの5人が主に、若い人に助けられたりしながら守っています。

1986年来の仲間

紅茶・ケーキセット

ピラフ

野草の花

野草に花

ピクチャーウインドウ

薪置き場

休暇中のテラス

春のテラス

雪のテラス

雪の薪置き場

薪ストーブ

テラス全景

遠景(秋)

遠景(春)

メニューと値段はなるべく変えないようにしています。消費税制が導入された時は、お客様からいただく代金を変えずに、税率改訂(上がる)まで踏ん張ったほどです。でも、それでは何ともならないことを学んでいます。

大きく変わったことは、開店15年目からピラフ、次いでピザが加わったこと。その後(スリランカの大津波後、事情があって)世界でいちばん高級といわれるオーガニックの紅茶の葉に切り替えることができたことです。

人気のあるメニューは “コーヒーもしくは紅茶と、ケーキのセット” です。1種類しかない手作りのケーキですが、ケーキの美味しい店にランキングされたことがあります。この開店来造り続けているケーキのおかげで、とても嬉しいことが時々生じます。

京都に来られた時はいつもアイトワに立ち寄り、「このケーキセットを頂くことにしています」と、必ず声をかけて下さる方がいらっしゃいます。10年ぶりにお見えになった3人連れのご家族は、お嬢様に次のような話をされました。「この前は、あなたまだ私のおなかの中にいたのですよ」「その時とまたく同じ味です」。

コーヒーには、2種類のクッキーを添えています。このクッキー、ある思い入れのもとに開店来、手作りし続けています。

パリの喫茶店などにある “パナシェ” を楽しんでいただけます。とりわけ夏場に「パナシェがあった」と喜ばれ、おかわりしながらのんびりと、心ゆくまで味わってくだる方がいらっしゃいます。

テーブルや椅子は、わけあってフィンランド製で、建築家 アルヴァ・アアルト が100年以上も前にデザインしたものを用いています。これはアイトワの贅沢の1つです。
そのテーブルを飾る花は、頂き物の花は例外として、アイトワの庭で採れた花を用います。とりわけ野草の生かし方を工夫しています。

冬場は薪ストーブのゆらゆらと燃える薪の炎を楽しんでいただけます。ノルウェー製の調理ストーブですが、これもアイトワのもう1つの贅沢です。
とりわけ薪は、すべて庭で育てた木の、主に間伐材を用います。ですから、クヌギ、スギ、ヒノキ、ウメ、あるいはクスがあれば、マツやムクがったこともあります。サクラ、スモモ、マキ、モチ、ネム、時にはシュロも、とまちまちです。

テラスでもBGMをステレオで聴いていただけるように工夫しています。今はまだ名もない演奏家たちですが、ケーナの素晴らしい響き。あるいは、アメリカインデアンのフルートの第一人者の音色をお楽しみください。
このBGMは、太陽光発電機の電気で再生されています。1994年に日本で最初に民間家屋に有償で太陽光発電機を設置しましたが、今は2代目が発電する電気です。

喫茶店は傾斜地に建てた半地下構造です。それは1年を通して井戸水の温度が変わらない原理を活かしたもので、窓を円弧にするなど省エネルギー効果も狙いました。その結果、“ピクチャーウインドウ”と呼ぶ自慢の窓を設けることができました。ぜひ虫の目線をお楽しみください。

地下構造にすると、避けられないのが閉塞感です。それをなくすために、ゆったりした“サンクガーデン”を設けて、カフェテラスにいたしました。ここでお聴きいただく小鳥や夏虫の鳴き声は、きっと「格別だ!」、お気に召すことでしょう。

このカフェテラスで幾組かの結婚披露宴や、幾度かの演奏会が催されたことがあります。集えるのは50人程度ですが、とても家族的だとか、音の響きが良いなどといって喜んでいただきました。

喫茶店の上階は木造で、16畳の間(10畳と6畳の続き部屋)があります。貸し部屋(半日1万円)としてお使いいただくことがあります。俳句の会、勉強会、あるいは奥嵯峨めぐりをする同窓会の基点などとして活かしていただいています。とりわけ、同窓会の基点に活かされた時は、ここでゆっくりと話し込んでしまわれる方がいらっしゃいます。

もちろん、5人の仲間は同じように歳をとりましたし、私的には大いに変わったこともありますが、この間に熟達したこともあります。当初はアルバイトを要していたところを5人で済ませられることが増えました。