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 選択と決断 13/04/14

 天候だけでなく心もどんよりした1日から始まりました。気力を高めようと、霧雨をついて庭に出て、鉈(なた)仕事に集中したり、風呂焚き場に薪を運び込んだり、あるいはポットで育てていたホオズキや白い野スミレなどの株を移植したりしました。夕食用の野菜の収穫や生ゴミを捨てる役割も買って出ました。何かしていないと落ち着かなかったのです。

 その一環として、気になる所で花をつけた野草が目に留まり、その場でしゃがみ込んで抜いたのですが、とてもつらい発見もしました。枯れて「消えた」、と思っていた大塊の父の片身のごときシュンランが盗まれていたのです。折よくと言っていいのでしょうか、その前日に、頂き物の寄せ植えを妻から「庭に下ろすように」頼まれていました。その中に一株の小ぶりのシュンランが含まれていたことを思い出したのです。そこで、シュンランの大塊を根こそぎ盗んだ人はどのような選択と決断を下してのことかと考えながら、シュンランの再生計画を立てました。

 実は先週の自然計画で、とても印象深い(両極端の)2つの思い出を割愛しています。それは長島で知った「御八日祭り」の猛々しい由来と、帰宅翌日に書生の伸幸さんが庭仕事中に応対した実に穏やかなご夫婦との触れ合いです。私にとっては、この2つは奇妙な点でつながっています。しかしその接点があまりにも生々しい行為ですから割愛しました。とはいえその後、シュンランが消えた理由が判明したことでもあり、ここでそのあらましを記しておくことにしました。

 御八日祭りは、不本意な死を切腹で遂げた武士の鎮魂が由来です。そうと知った時に、私は新婚間もない時期に妻と交わした約束の1つを思い出し、その約束を10年ほどしてから妻に見事に切り返されたことを振り返っています。そのおかげでしょうか、九州からの帰宅翌日に知った伸幸さんと穏やかなご夫婦の触れ合いが、私には無性にうれしかった。その奥さまの最後の一言は、「このような生き方を目指しましょう」といったような夫への呼びかけだったそうです。

 4日月曜日、朝一番、藍花ちゃんが新入生になることを知る。昼、東トルコの旅を共にした鈴木さんが、東京から迎えた植物好きのご夫妻と予定通りに来訪。しばし歓談。午後、庭仕事に精を出していた時に次の書生候補者の彬さんが関東から到着。早速着替えて、畝づくりに参画。夕刻、妻は人形教室の会長さんや喫茶店を切り盛りしてきた仲間とともに義弟の通夜に出かける。

 火曜日は、終日義弟の告別式に費やしています。初七日も済ませたからです。水曜日は、陽がある間は彬さんと庭仕事に精を出しました。彬さんは冬野菜の畝づくりに、私は鉈仕事の続きやレーキの修繕などこまごました作業に当たったのです。そして夕刻から、予定通りにtosca」の3人を迎え、彬さんのパエリヤと、妻の即興料理でもてなしました。この即興料理に、その日牛深から届いた野菜を妻はふんだんに活かしました。その宅急便には、ハマボウフウの苗が添えられていましたので、「何とかこの庭に根付かせたい」との思いで陽のある間に庭に植えています。

 木と金は関東出張でした。その間に、「tosca」から「お食事にでも」とケイタイに電話があり、彬君に受けさることにしています。彼もマクロビアン料理が気に入ったようです。

 週末に、庭木が1本加わりました。木陰のテラスと呼んでいるわが家の月見台の前に、サクラの若木を植え付けました。これまでは月見台で、秋の紅葉を主に愛でてきましたが、この植樹で、春の花見もより艶やかに楽しみたくなっています。この春、新果樹園で昨秋植えたアーモンドやシダレウメなどがかわいい花を咲かせましたが、それがこの1本を追加させたキッカケです。

 今週の美味は、ハスの実のジャムを塗ったトースト、牛深のツワブキを妻が即興で調理した一品、そして親友から届いた頭を見せる前に掘り出した白子の筍とワカメの炊き合わせでした。

 

今週は2度にわたって鉈仕事に精を出しました。鉈仕事とは、剪定クズの枝などを、鉈で次から次と薪の寸法に断ち切ってゆく作業です。ひと思いで断ち切れそうにない太いのは残し、別途両手でかざす斧(おの)でさばきます。2度目の鉈仕事では、子どものころに買ってもらった既製品の本立てや、首のあたりが腐ったレーキの柄の付け替えなどもしています。

寄せ植えに含まれていたシュンランはとても小さな株ですが、清楚な花をつけています。また、大塊のシュンランの盗まれた跡を丁寧に点検すると、石の間にとても小さな株が一株残っていました。そこで、新たにシュンランを育てる場所を定めて、その復元に努めることにしたわけです。

「これから入学式に臨みます」。あと半時間もすれば「愛花が小学校の後輩になります」と言って、休塾中の伴さん夫婦が藍花ちゃんをともなって訪ねてくれました。そこで、藍花ちゃんの誕生祝記念樹、白い「侘助」の樹も入れて記念写真を撮りました。今週は、伴さんが染工場を閉めたときに、幾つかの道具を引き継ぎましたが、その1つの活かし方を定めています。シイタケのホタギを伏せているところに設置して雨水を溜め、乾季にシイタケのホタギに湿度を与えるために生かします。


コゴミ


フキ

アマナ
ミツバやセリはもとより、コゴミ、フキ、ツワブキ、アマナあるいは宿根ソバなど、さまざまな野草の生き場所も定めています。

今週は嬉しい贈り物が2つありました。牛深から届いた山の幸(山菜や切干しダイコン)と海の幸(サバ節)、そして京都の反対側から届いた陽が昇る前に掘り出した筍(白子)です。これを機に、わが家の庭でハマボウフウが育つことになるかもしれません。

ミニハスの株を新たな場所に移動させましたが、過日岐阜県の友人から送られてきたハスの実のジャムを、トーストにたっぷりと塗って再度味わい直しました。とても手間のかかる作業を要したジャムでしょう。

「高砂」という品種の桜が庭に加わりました。週末のことです。これで、春の花見がとても楽しくなりそうです。伸幸さんと語らったご夫婦は、この庭に入った瞬間からこの庭の特質に気付かれたようです。いわばその選択と決断のありようでしょう。伸幸さんは私を呼ぼうとしたようですが、お2人は少し離れたところで除草に没頭する私を見て、制止され、このような庭を造ろうとって相談されていたようです。いずれ、この高砂も観ていただけることでしょう。